標準時とは?世界と日本における定義から決め方まで詳しく解説

標準時とは?世界と日本における定義から決め方まで詳しく解説

いつも時計を何気なく使っているけれど、そもそも地域によって異なる時間をどのように揃えているのか気になったことはありませんか?

この記事では標準時とは何かからその種類、決め方について詳しく解説します。

標準時とは?

標準時とはある国家や地域が共通で使う時刻のことです。

昔は地球の自転を基に1日の長さを決め、それを分割して1秒の長さとしていましたが、観測技術の向上につれて地球の自転速度が一定ではないことがわかってきました。

これでは時刻がどんどんずれていってしまうため、1967年に量子力学に基づくセシウム原子の遷移周波数からの定義に改定されたのです。

その定義は「1秒は、セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍の継続時間である」というものですが、地球の自転に基づく時刻の精度と比較すると2倍以上の精度となりました。

このセシウム原子からの遷移周波数を実現する装置を「原子時計」と呼び、世界中の原子時計を加重平均することによって決定される時刻は国際原子時(フランス語でtemps atomique internationalの頭文字からTAIと称される)と定められています。

参考:国立研究開発法人情報通信研究機構「NICT NEWS No.451」

世界の標準時

世界における時刻の基準を2種類ご紹介します。

協定世界時(UTC

TAIは地球の自転速度を鑑みていないため、TAIと地球の自転に応じた時間である世界時にはずれが生じてきます。 

このずれが1秒以上になる前に挿入・削除をして調整を加えたのが協定世界時で、Universal time coordinatedの頭文字をとってUTCと呼ばれ世界標準時として使用されています。

ずれの1秒はうるう秒と呼びますが、これは2019年5月までの間に27回挿入されているのです。

また地球の自転速度の変動は予想がつかないため、いつうるう秒の調整を行うかは自転の観測結果を見ながら半年ごとに決定されます。

UTCを基準とした世界の主な都市の時差を表にまとめてみました。

国名

都市名

時差

イギリス

ロンドン

UTC±0

フランス

パリ

UTC+1

ギリシャ

アテネ

UTC+2

南アフリカ共和国

ヨハネスブルグ

UTC+3

アラブ首長国連邦

ドバイ

UTC+4

パキスタン

カラチ

UTC+5

バングラディシュ

ダッカ

UTC+6

タイ

バンコク

UTC+7

中華人民共和国

北京

UTC+8

日本

東京

UTC+9

オーストラリア

シドニー

UTC+10

ニューカレドニア

ヌーメア

UTC+11

ニュージーランド

オークランド

UTC+12(UTC-12)

アメリカ合衆国

ミッドウェー諸島

UTC-11

アメリカ合衆国

ホノルル

UTC-10

アメリカ合衆国

アンカレジ

UTC-9

アメリカ合衆国

ロサンゼルス

UTC-8

アメリカ合衆国

デンバー

UTC-7

メキシコ

メキシコシティー

UTC-6

カナダ

モントリオール

UTC-5

ブラジル

マナウス

UTC-4

アルゼンチン

ブエノスアイレス

UTC-3

ブラジル

フェルナンド・デ・ノローニャ諸島

UTC-2

ポルトガル領

アゾレス諸島

UTC-1

 

国や地域それぞれの事情により、時差が変化する場合があるのを覚えておきましょう。

参考:国立研究開発法人情報通信研究機構「NICT NEWS No.451」

参考:CITIZEN「世界の時差について」

グリニッジ標準時GMT

グリニッジ標準時とはグリニッジ平均時とも称されるイギリスのグリニッジ天文台のグリニッジ子午線(経度0度)における平均太陽時のことで、グリニッジ平均時=Greenwich Mean Timeの頭文字を取ってGMTと呼ばれています。

かつて世界標準時とイギリスの標準時として使用されていたことから、イギリスでは今でも伝統的に標準時をGMTと呼んでいるのです。

GMTとUTCを比較するとUTCの方が原子時計と精密な天体観測に基づくため精度がはるかに高いのですが、日常生活に不都合があるほどの誤差ではないため、今でも時刻の基準の1つとして親しまれています。

また時差についてもUTCと同じように、GMT±数値という形で表されます。

日本の標準時

日本では兵庫県明石市を通る東経135度の子午線を基準とし、UTCに9時間の時差を加えて標準時としています。

しかし今のUTCが計算されるのは厳密には次の月となるため、実際には時計合わせなどには使用することができません。

そのため日本ではリアルタイムの標準時を東京都小金井市にある国立研究開発法人情報通信研究機構の本部で18台のセシウム原子時計を用いて生成し、日本標準時という名称で供給しているのです。

UTCとの比較やTAIへの参加も必要なため、人工衛星を仲介する10億分の1秒以下の高精度な時刻比較を定常的に行っています。

こうして作られた日本標準時は福島の送信所(40kHz)と九州の送信所(60kHz)の2か所から全国に送信され、電波時計はこの電波を受信して時計合わせをしているのです。

また国立研究開発法人情報通信研究機構の本部のみで日本標準時を生成していると、災害などで原子時計が停止してしまった場合、電波時計やITなどさまざまな場所に日本標準時を供給できなくなってしまいます。

そのリスクを軽減するため、2018年6月からは新たに神戸市に副局を設け、日本標準時生成に必要なシステムを導入して運用を開始しました。

将来的には地域へと局をもっと分散化したり、超高精度な標準時を求める技術を開発したりして、より正確な日本標準時を安定的に供給していく活動が進められています。

参考:国立研究開発法人情報通信研究機構「NICT NEWS No.451」

標準時の確認方法

電波時計以外の時計を使用している場合定期的な時刻合わせが必要となりますが、参考となる標準時の確認方法を3つご紹介します。

時報(117)で確認する

NTT東日本とNTT西日本のエリア内においては、「117」の電話番号で10秒ごとに現在の時刻を確認することができます。

通話料はかかりますが、年中無休でアナウンスしてもらえるためインターネットがつながりにくくなった場合でも正確な時刻を知ることができるのです。

国立研究開発法人情報通信研究機構のホームページで確認する

国立研究開発法人情報通信研究機構のホームページでは「JST Clock」というページで日本標準時を案内しています。

インターネットの通信回線の速度や混雑状況によってずれが生じるため、完全に正確な時刻とは言えませんが、「日本標準時」「協定世界時(UTC)」「国際原子時(TAI)」「地域標準時」の4つを知ることができるのです。

またPCの内臓時計と地域標準時の差も表示してもらえるため、PCの時刻合わせにも便利に使用することができます。

インターネットで正確な時刻を知りたい場合は、まずJST Clockを確認してみましょう。

参考:国立研究開発法人情報通信研究機構「JST Clock」

GMTの配信サイトで確認する

昔ながらのグリニッジ標準時で時刻合わせをしてみたいという遊び心のある人には、GMTの配信サイトで時刻を確認することをおすすめします。

日本との時差であるGMT+9の時間も表示されるため、その時刻を参考に時刻合わせをすると日本におけるグリニッジ標準時に時計を合わせることが可能です。

時刻合わせの楽しみも満喫できるブランド「和心」

和心は、1964年創業の腕時計メーカー、株式会社和工がお届けする日本製にこだわった腕時計ブランドです。

ラインナップには敢えて電波時計を加えず、昔ながらの時刻合わせも含めお客さまに楽しんでいただける仕様となっています。

これは時報、UTC、GMTとどの標準時を用いるかも含め、お客様の手で腕時計を自分だけのものにカスタマイズしてほしいと弊社が願っているからです。

取扱説明書にじっくりと目を通しながら、ひとときの時刻合わせを優雅に楽しんでみませんか。

和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)

まとめ

標準時とはある国家や地域が共通で使う時刻のことですが、UTCを基本とし、より精度の高い標準時を発信するための技術が進歩し続けているとわかりました。

ぜひ世界にはさまざまな標準時があることに目を向け、時刻を知るということを楽しんでみてください。