腕時計を購入するなら間違えて落としてしまったり、どこかにぶつけてしまったりする可能性も考慮して衝撃に強い時計を選びたいけれど、何を基準に選べばよいのかよくわからない人も多いのではないでしょうか。
この記事では衝撃に強い時計の基準から使用されている技術まで詳しく解説します。
目次- ■衝撃に強い時計の基準とは?
- ■衝撃に強い時計が用いている技術とは?
- 耐震構造
- 5段階衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造
- Apple Watchケース
- ■腕時計を長く愛用するための使い方を啓蒙し続けるブランド「和心」
- ■まとめ
■衝撃に強い時計の基準とは?
衝撃に強い時計の基準には、製品の種類・寸法や品質・性能、安全性などを定めた国家規格であるJIS規格があります。
衝撃に強い腕時計を専門用語で耐衝撃携帯時計と呼びますが、これは一般的な腕時計と比べ衝撃に強い特長を持つ製品という意味です。
2018年8月に経済産業省よりこの耐衝撃携帯時計に関する新しいJIS規格である、JIS B7027(耐衝撃携帯時計ー衝撃性能及び試験方法)が発表されました。
JIS規格票には、一般社団法人日本時計協会および一般財団法人日本規格協会から工業標準原案を鑑みて日本工業規格を制定した方が良いとの申し出があり、必要な審査を経て制定に至ったことが記載されているのです。
具体的には耐衝撃携帯時計とは、1 mの高さから硬い木の上に落下させた衝撃に耐える携帯時計であると定義づけられています。
この規格の制定によって、消費者が衝撃に強い腕時計を購入することと粗悪品を排除することが可能となったため、消費者利益の保護と適正な流通が促進されることとなりました。
■衝撃に強い時計が用いている技術とは?
衝撃に強い時計は、具体的にどのような技術を用いて作られているのでしょうか。
3つご紹介します。
耐震構造
機械式時計が正しく時刻を刻むためには天符という調速機構が必要です。
この天符は大きな輪の形をした天輪と、中心にある大きな軸である天真(てんま)と、天輪と天真をつなぐヒゲゼンマイで構成されていますが、この中の天真が機械式時計の中で一番衝撃に弱い部品だと言えます。
なぜなら天真は先端が0.1mmと非常に細く、この部分が衝撃で折れてしまうと腕時計は止まってしまうためです。
そこで天真にかかる衝撃を和らげるために開発されたのが耐震構造です。
耐震構造にはいくつか種類があるため、名前と概要を表にまとめてみました。
耐震構造の名前 |
メーカー |
技術の概要 |
パラショック構造 |
CITIZEN |
・腕時計の水平方向に衝撃が加わると渦巻きバネがたわんで力を逃がすことで衝撃を緩和する ・腕時計の垂直方向に衝撃が加わると受石と一体化した受石座がたわんで力を逃がすことで衝撃を緩和する |
インカブロック |
インカ社 |
・円の上下が窪んだ形をした耐震構造を取り付けることで、衝撃を緩和する ・構造の要となる石(ルビー)を2か所で保持する |
キフショック |
キフ社 |
・洋なしのような形をした耐震構造を取り付けることで衝撃を緩和する ・構造の要となる石(ルビー)を3か所で保持する |
パラフレックス |
ROLEX |
・2005年にロレックスが開発し特許を取得した耐震構造で動的3Dモデリングで設計された革新的なスプリング形状を持つ ・ロレックスの腕時計における耐衝撃性を最大50%向上させた |
CITIZENではパラショック構造の有効性をPRするため、1956年6月10日に大阪の御堂筋において、地上30mで静止したヘリコプターより腕時計を投下して性能を確かめる実験を行ったのが有名です。
5段階衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造
CASIOの初代G-SHOCKから採用されたのが、5段階衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造です。
5段階衝撃吸収構造とは、具体的には時計の心臓部に衝撃が加わった際ケースカバー、メタルケース、ゴムガードリング、メタルガードリング、保護ゴムの5段階で衝撃を吸収する仕組みを指します。
CASIOで初代G-SHOCKの開発に携わったエンジニアの伊部菊雄さんによると、最初は上下左右にゴムをつけて衝撃吸収をすればよいと考えていたものの、ソフトボール大にまで巻かなければ腕時計が壊れてしまうため、この構造が生み出されたと言います。
しかしこの5段階衝撃吸収構造のみでは、1つだけパーツが壊れるという現象が起こったため、衝撃を受ける部分を点で支え、時計の心臓部を浮いた状態にする点接触の心臓部浮遊構造を付加することとなったのです。
伊部菊雄さんは1つだけパーツが壊れるという課題をなかなか解決することができず悩んでいたところ、公園で子供がボール遊びをしているのを見かけて偶然ボールの中に時計が浮いている絵を閃き、点接触の心臓部浮遊構造を作ることができました。
この技術はG-SHOCK代々に受け継がれ、さらなる技術革新で時計の心臓部自体の耐衝撃化も実現し、現在に至っています。
参考:織田一朗「時計の科学」
参考:ITmediaビジネス「30年経った今だから話せる、初代G-SHOCK開発秘話――エンジニア・伊部菊雄さん」
Apple Watchケース
スマートウォッチの1つ、Apple Watchにはさまざまなメーカーからケースが発売されていて、Apple Watchを衝撃から守るだけではなくその日のファッションに合わせてケースを変えることでおしゃれも楽しむことができるようになっているのです。
これは元々のApple Watchの耐衝撃性が低いことから、ケースへのニーズが生まれたのではないかと言われています。
ケースには耐衝撃性に優れたもの、防水性に優れたもの、デザインが美しいものなどさまざまな中から選ぶことができますが、耐衝撃性に優れたエレコム株式会社のモデルでは米国軍用規格MILスタンダードに準拠した1.22mからの落下テストをクリアしています。
Apple Watchの耐衝撃ケースの主な種類は次の3つです。
- 本体への傷を防止するフレームのみのタイプ
- 液晶も保護することができるフレームと保護カバーが一体型のタイプ
- バンド一体型タイプ
目的に応じた機能を選んでつけることのできるケースは、Apple Watchの機能をさらに高めることができる重要な存在と言えるでしょう。
■腕時計を長く愛用するための使い方を啓蒙し続けるブランド「和心」
和心は1964年創業の腕時計メーカー株式会社和工が製作・販売する、日本製にこだわった腕時計ブランドです。
株式会社和工には時計の修理に関する名称独占資格である1級時計技能修理士が1名、2級時計技能修理士が1名在籍しているため、衝撃を受けて壊れてしまった腕時計をプロの手で丁寧に修復していますが、それと同時に腕時計の正しい使い方についてお客様にお伝えするのが大切だと考えています。
例えば取扱説明書には腕時計をした状態で激しい運動をするのは控えてほしいこと、オートバイ・削岩機・チェーンソーなどによる強い衝撃が加わった場合一時的に遅れが生じることなどを明記させていただいているのです。
耐衝撃性能をどれだけ高めてもお客様が腕時計を正しく取り扱わない限り、長く愛用していただくことはできないため和心ではこのような発信を大切にしています。
大切に使い続けられる腕時計をお探しなら、ぜひ和心に触れてみてください。
和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)
■まとめ
衝撃に強い時計とはJIS規格 B7027で1 mの高さから硬い木の上に落下させた衝撃に耐える携帯時計であると定義づけられており、日本ではさまざまな技術を用いてその規格をクリアした腕時計を開発し続けていることがわかりました。
この記事も参考にして、ぜひ自分に合った衝撃に強い腕時計を見つけてみてください。