機械式時計を購入するなら日本製が良いと勧められるけれど、理由がよくわからず困っている人はいませんか?
この記事では機械式時計とは何かから日本におけるメーカー別の特徴まで詳しくご紹介します。
■機械式時計とは?
機械式時計とは、機械式ムーブメントを用いた時計のことで、一度巻き上げたゼンマイが戻る力を動力として歯車を動かします。
機械式時計の中でも自動的にゼンマイが巻き上がるのを自動巻き、リューズ(腕時計の横にあるつまみ)を回して手動でゼンマイを巻き上げる必要があるのを手巻きと呼ぶのです。
機械式時計は1300年ごろに誕生した重りを動力とする固定式の時計に始まり、1462年ごろにゼンマイを動力とする小型時計へと発達しました。
そして近世の懐中時計を経て、腕時計へと進化を続けてきたのです。
■機械式時計のメーカー別の特徴
日本製の機械式時計にはメーカー別に特徴があるため、それぞれご紹介します。
CITIZEN
CITIZENは長年、太陽光や室内のわずかな光を電気に変える独自の技術で製造された、光発電時計に力を注いできました。
しかしCITIZENグループ全体で新しい開発・製造体制を整え2010年以来初めてとなる機械式時計「ザ・シチズン メカニカルモデルCaliber 0200」を2021年8月に発売したのです。
ザ・シチズン メカニカルモデルCaliber 0200はCITIZENの自社設計・自社組立による機械式時計ですが、2012年にシチズンウォッチグループへと迎えたスイスのラ・ジュール・ペレ社の持つ高い装飾技術も最大限活用しており、スイス製と日本製の良い部分を兼ね備えていると言えるでしょう。
またザ・シチズン メカニカルモデルCaliber 0200は時計の精度の規格であるスイス公認クロノメーター検定協会の基準である1日の誤差-4秒~+6秒を上回る、-3秒~+5秒という正確さを誇っているのです。
これらのことからザ・シチズン メカニカルモデルCaliber 0200はザ・シチズンのブランドコンセプトでもあるCITIZENのメーカーとしての理想を表現した機械式時計だと言えます。
そして8年ぶりにモダン・スポーティなデザインの「シリーズエイト」も再始動させ、CITIZEN全体として機械式時計の製造・販売に意識が向いているのがうかがえるため、これからのCITIZENの機械式時計には期待が持てるでしょう。
機械式時計において性能だけではなく、デザインにもこだわりたい人におすすめです。
参考:CITIZEN Group Report 第136期報告書「THE CITIZEN」
オリエント
日本の腕時計メーカーの中でも、機械式時計にこだわって開発・製造・販売を続けているのがオリエントだと言えるでしょう。
オリエントは1950年に多摩計器株式会社として設立されて以来、「つける悦び」「魅せる喜び」「繋ぐ慶び」の3つを追求して機械式時計を作り続けているのです。
デザイン、パーツ、製造、全てで「輝ける星」と呼ばれる機械式時計を目指し、商品名を「オリエントスター」と名付けたことも、オリエントにおける職人の気概を感じます。
また2017年に20年にわたり事業を推進する上での協力関係にあったセイコーエプソン株式会社と統合しますが、2021年にはセイコーエプソン株式会社の持つ半導体技術を活かして自社開発したシリコン製のがんぎ車(機械式ムーブメントの部品の1つで脱進機と呼ばれる)を採用し、70時間駆動を可能とするモデルを開発しました。
ロングパワーリザーブモデル(長時間駆動モデル)以外の機械式時計における連続駆動時間が42~46時間程度だということを考えると、オリエントの技術の高さがわかるでしょう。
腕時計と言えば日本製で、しかも機械式時計にこだわって選びたい人におすすめです。
KURONO TOKYO
KURONO TOKYOは世界に31人しかいないスイス独立時計師アカデミー正会員の浅岡肇さんが手がける機械式腕時計のブランドです。
浅岡肇さんがデザインからほぼ全ての部品製造、組み立て、仕上げまで手掛ける「Hajime Asaoka TOKYO JAPAN」の時計は年間製造本数が10本前後のため、顧客は王室や世界的な時計コレクターなどに限られています。
しかしKURONO TOKYOは浅岡肇さんが自分で普段使いするためのリーズナブルな機械式腕時計を目指して立ち上げられたブランドのため、あまりマーケティングや販売といったことを考えず浅岡さんの主観がデザインに取り入れられているのが特徴的だと言えるでしょう。
プロの独立時計師の仕事をその腕で確かめてみたい人におすすめです。
■日本製の機械式時計にこだわるブランド「和心」
和心は、1964年創業の腕時計メーカー、株式会社和工がお届けする日本製にこだわった腕時計ブランドです。
多くのメーカーが中国工場を立ち上げる中、和心の腕時計は日本の大手腕時計メーカーに提供してきた技術で丁寧に加工を行うため、埼玉県内にある株式会社和工の自社工場にて製造しています。
また機械式時計というと主に日本製ムーブメントへのこだわりを持つ人が多いかもしれませんが、和心ではムーブメントだけではなく、バンドにも全て日本製の素材を採用しているのです。
和心における機械式時計では「東京豚革」と「博多織」の2つのバンドを用いています。
東京豚革は日本国内で唯一飼育から加工、製品化までを自給自足できる革です。
日本ではあまり耳にしない素材ですが、海外では高級革として有名ブランドのバッグなどにも用いられ、摩擦に強く通気性が良いことから素材として高い評価を得ています。
和心では、国内生産量の8割を占める東京都墨田区生まれの豚革だけを用いてバンドを製造しています。
そして博多織は福岡県博多地域特産の絹織物で、国から伝統的工芸品の指定を受けているのです。
伝統的工芸品の定義は次の通りです。
“「伝統的工芸品」とは
- 主として日常生活の用に供されるもの
- その製造過程の主要部分が手工業的
- 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
上記5つの項目を全て満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号、以下「伝産法」という)に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。
出典:経済産業省「伝統的工芸品」“
つまり、博多織は法律で認められた日本独自の工芸品だと言えるでしょう。
和心では博多織の中でも、江戸幕府への献上品として知られた「博多献上帯」をバンドに使用しています。
機械式ムーブメントだけではなく、東京産の豚革、博多生まれの絹織物でできたバンドと細部まで日本製にこだわった和心の機械式時計は、国産の安心感と日本の伝統文化の良さを融合していると言えるでしょう。
時計を選ぶ際、品質の高さだけではなく日本の伝統文化の良さも取り入れてみたい人におすすめです。
和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)
■まとめ■
機械式時計とは機械式ムーブメントを用いた時計のことで、一度巻き上げたゼンマイが戻る力を動力として歯車を動かす仕組みですが、日本製品においては各メーカーがそれぞれのブランドの方針において独自の進化を続けているため、たくさんの人に愛され続けているとわかりました。
ぜひ多くのメーカーやブランドの中から、自分が長く使い続けたいと感じる機械式時計を見つけてみてください。