将棋における時間とは?ルールから計測方法まで詳しく解説

将棋における時間とは?ルールから計測方法まで詳しく解説

藤井聡太九段が竜王・王位・叡王・王将・棋聖の5冠を達成したことから盛り上がりを見せている将棋界ですが、将棋においては時間についてのルールが細かく決められているのをご存知でしょうか。

この記事では将棋における時間についてのルールからその計測方法まで詳しく解説します。

将棋における持ち時間や休憩時間とは?

将棋におけるタイトル戦では、棋士の食事メニューがよくネットニュースとなり、SNSなどでも話題になることから、食事休憩をはさんでいるのを知っている人も多いのではないでしょうか。

現在行われている8つのタイトル戦、竜王・名人・王位・王座・棋王・叡王戦・王将・棋聖における棋戦や順位戦では持ち時間や休憩時間が次のように定められています。

棋戦名

持ち時間

日数

昼食休憩

夕食休憩

竜王

8時間

2日制

12時半~13時半

なし

名人

9時間

2日制

12時半~13時半

18時~18時半(2日目、休憩のみ)

王位

8時間

2日制

12時半~13時半

なし

王座

5時間

1日制

12時10分~13時

18時10分~19時

棋王

4時間

1日制

12時10分~13時

なし

叡王戦

4時間

1日制

12時~13時

なし

王将

8時間

2日制

12時半~13時半

なし

棋聖

4時間

1日制

12時~13時

なし

順位戦

6時間

12時~12時40分

18時~18時40分


同じ棋戦とはいえども、持ち時間も休憩時間もさまざまであることがわかるでしょう。

持ち時間とは?

前項の表で出てきた、持ち時間について少し詳しく見ていきましょう。

将棋における持ち時間とは、あらかじめ決められた対局に使用できる時間の限度のことを指します。

将棋における持ち時間には3種類の設定があるため表にまとめてみました。

持ち時間の設定

概要

指し切り

あらかじめ定められた持ち時間を使い切ると即負けとなるルールでアマチュアの将棋大会・早指し・練習対局などで用いられる

秒読み

持ち時間を使い切ると1手1分以内に指さなければならなくなるルールで将棋と囲碁で用いられる

フィッシャールール

あらかじめ定められた持ち時間を使い切ると即負けとなるが1手ごとに決められた時間が加算されていくルールでチェスの公式戦でよく用いられる


同じ持ち時間とはいっても、3種類のうちどのルールを採用するかによって棋戦にかかる時間が全く異なってくるのがわかるでしょう。

それではこの持ち時間は、どのような方法で計測されるのでしょうか。

日本将棋連盟の対局規定では、対局者の持ち時間をストップウォッチあるいはチェスクロックで計測すると定められています。

ストップウォッチで計測する場合は、1分未満の消費時間は切り捨てとなるため、例えば4分ちょうどで指した場合と4分59秒で指した場合は消費時間は同じ4分で計測されるのです。

また持ち時間を使い切る1分前から秒読みを行い、使い切った場合は負けとなります。

チェスクロックで計測する場合は、秒単位で持ち時間が消費されるため、4分ちょうどで指した場合消費時間は4分、4分59秒で指した場合は4分59秒と計測されます。

持ち時間を使い切るとそこから秒読みが開始され、いわゆる「1分将棋」や「30秒将棋」となるわけです。

計測に用いるチェスクロックとは対局時計やゲームクロックとも呼ばれる特殊な時計で、将棋だけではなく囲碁やチェスなどの時間計測にも使用されます。

アナログ式とデジタル式の2種類がありますが、いずれも1台に2つの時計がついており、対局者それぞれの持ち時間が表示されるのです。

2つの時計のうち片方の時計のボタンを押すとその時計が止まり、同時にもう片方の時計が動き出す仕組みとなっています。

参考:日本将棋連盟「よくある質問」

参考:日本将棋連盟「対局規定(抄録)」

将棋における時間についてのエピソード

将棋のルールと時間は切り離せないものだということをおわかりいただいたところで、将棋の歴史の中では時間に関するエピソードがたくさん残っているため3つご紹介します。

南禅寺の決戦における「長考」

木村義雄八段と坂田三吉八段が東西の将棋界の威信をかけて対戦し、阪田8段が初手で△9四歩と端歩をついたことでも有名なのが南禅寺の決戦です。

この勝負は1937年2月5日から11日までの7日間、持ち時間各30時間という異例の条件で、京都市洛東にある南禅寺で行われました。

坂田八段は30手目に6時間にわたる長考をし、△3三桂という手を打ちましたが、相手の木村八段も2時間ほどの長考をするなど、勝負所では2人とも時間をかけて非常に慎重な将棋を打ち続けていたのが棋譜に残されているのです。

坂田八段は66才と高齢であったことから娘の玉江さんの付き添いが認められるなどの配慮がされましたが、対局が終わった後は足元がおぼつかず、玉江さんが抱えるようにして歩いていたと観戦記に記されています。

また木村八段も7日間外出せず豪華な食事を摂り続けていたことから南禅寺の決戦後は糖尿病を患ってしまい、その後の将棋人生を縮めてしまいます。

結果は95手で先手の木村八段が勝利しましたが、坂田八段の孫弟子に当たる内藤國雄九段は、自著「坂田三吉名局集」の中で、この南禅寺の決戦を「三百七十年に及ぶ将棋の歴史の中で最大の一番」と称しているのです。

参考:日本将棋連盟「南禅寺の決戦」

長考に好手なし

将棋界には「長考に好手なし」という格言が存在します。

この格言は、長い時間考えたからといって良い手を打つことができるとは限らないという意味を表しています。

長考とは将棋においては次の一手を打つために長い時間を使って考えることを指しますが、これは最善手を指すためにできるだけ多くの選択肢を考慮しているのです。

将棋界に多大なる功績を残している羽生善治九段も、長考をするというのは迷っている証拠だと話しています。

時間の使い方は棋士によって個性が出る部分ではありますが、棋戦において長考をした棋士でも負けてしまった事例は存在するので、この格言には一理あると言えるでしょう。

持ち時間を1分も使わずに勝利

2005年3月18日に行われた第18期竜王戦昇級者決定戦1回戦は、大平武洋四段(当時)対児玉孝一七段(当時)の対局でした。

この時大平武洋四段は、その日の夜に行われるZONEの解散コンサートに行きたいからと全ての手を1分未満で指し、持ち時間を1分も使わずに勝利します。

終局は午前11時過ぎで、埼玉県三郷市で行われたコンサートに間に合ったのはもちろんですが、将棋の公式戦で持ち時間を1分も使わずに勝ったのは史上3人目の快挙となりました。

将棋は長い時間をかけた対局が注目されることが多いのですが、このように短い時間で終局することもあるのです。

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和心は、1964年創業の腕時計メーカー、株式会社和工がお届けする和にこだわった腕時計ブランドです。

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一度お求めいただいた和心の腕時計は末永く使っていただけるよう、時計の修理に関する名称独占資格である1級時計技能修理士、2級時計技能修理士によって丁寧なメンテナンスを行っているのです。

棋戦における時間の使い方がそれぞれの棋士によって異なるように、和心でもお客様それぞれの時間の使い方にふさわしい腕時計をこれからも作り続けていきます。

和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)

まとめ

将棋において持ち時間や休憩時間は棋戦によって異なり、長考や短時間による終局など棋士によってさまざまな時間の使い方があることがわかりました。

ぜひこの記事も参考にして、将棋界における時間の流れというものを感じてみてください。