独立時計師とは?メンバーから作品まで詳しく解説

独立時計師とは?メンバーから作品まで詳しく解説

腕時計について調べていくうちに独立時計師という言葉が出てきたけれど、どのような人を指すのかよくわからなかったという人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では独立時計師メンバーからその作品まで詳しく解説します。

独立時計師とは?

独立時計師とは、国際的な組織であるAHCI(独立時計師アカデミー)に所属している時計職人のことを指します。

独立時計師はメーカーや企業に在籍せず、個人のアトリエや工房で時計製作を行っているのが特徴的だと言えるでしょう。

2022年1月現在、独立時計師としてAHCIに所属しているのは次の34名です。

独立時計師の名前

出身地

AHCIに所属した年

スヴェン・アンデルセン

デンマーク

1985年

浅岡肇

日本

2015年

ルドヴィック・バルアー

フランス

2018年

フェリックス・バウムガルトナー

スイス

1999年

アーロン・ベクセイ

ハンガリー

2009年

ロバート・ブレイ

イギリス

2007年

シリル・ブリヴェット=ナウドット

フランス

2021年

ヴィンセント・カラブレーゼ

イタリア

1985年

ダヴィッド・カンドー

スイス

2019年

コンスタンチンチャイキン

ロシア

2010年

フィリップ・デュフォー

スイス

1997年

ミキ・エレタ

スイス

2008年

ジョン・ミカエル・フラウ

フランス

2021年

ポール・ゲルバー

スイス

1988年

ベアト・ハルディマン

スイス

2002年

ヴィアニー・ホルター

フランス

2000年

リン・ヨンファ

中国

2019年

フランソワ=ポール・ジュルヌ

フランス

1988年

フランク・ユッツィ

スイス

2000年

菊野昌宏

日本

2013年

クリスチャン・クリングス

ドイツ

2009年

ステファン・クドケ

ドイツ

2021年

マルコ・ラング

ドイツ

2005年

ベルナルド・レデラー

ドイツ

1985年

徐州馬

中国

2015年

セバスチャン・ネーシュケ

ドイツ

2006年

ラウル・パジェス

スペイン

2017年

アントワーヌ・プレジウソ

スイス

1996年

アレッサンドロ・リゴット

イタリア

2019年

フロリアン・シュルンプフ

スイス

2021年

ルデク・セリン

チェコ

2021年

アンドレアス・ストレーラー

スイス

2000年

カリ・ヴティライネン

フィンランド

2006年

タン・ゼワ

中国

2019年


AHCIに所属するためには総会でメンバー全員の同意を得る必要があるため、高度な技術や創造性を持った時計職人でなければ独立時計師になるのは難しいと言えるでしょう。

参考:AHCI公式ホームページ

日本人独立時計師作品について

日本では浅岡肇さん、菊野昌宏さんと2人の独立時計師が活動していますが、2人の創り出す作品にはどのようなものがあるのでしょうか。

それぞれご紹介します。

 浅岡肇さんの作品とブランド

浅岡肇さんの作品は、1950年~1960年の腕時計の様式を再現しているのが特徴的です。

4つの代表的な作品と2つのサブブランドをご紹介します。

Chronogragh

浅岡肇さんが1950年~1960年ごろの腕時計が持つコラムウィール(機械式時計の作動を制御する方式の1つで精密な制御が可能)、キャリングアーム(秒針の歯車から動力を伝達・切断する方式の1つで見た目が美しい)による水平クラッチ、ブレーキレバー、2ボタン、スライディングギア(秒積算と分積算を連動させる仕組み)などの機構を再現して搭載した腕時計です。

これらの機構を文字盤側に配置することで、機械式時計がどのように動いているのかを視認することのできる工夫が施されています。

Chronograghの精密な動きと機能は、浅岡肇さんのYouTubeチャンネルでも動画で公開されているので、興味のある人は見てみることをおすすめします。

参考:YouTube「CHRONOGRAPH by Hajime Asaoka」

Project-T Tourbillon

Project-T Tourbillonは航空・宇宙産業に携わる由紀精密、世界最高峰の工具メーカーOSGの加工技術と浅岡肇さんの時計製造技術を結集して完成させたトゥールビヨンです。

一部の軸受け(回転する軸を支える部品)にルビーではなく、13個のボールベアリングを使用しているのが特徴的だと言えるでしょう。

またキャリッジの軸受けに使われているボールベアリングは世界最小で、これらを使用することにより耐久性・耐衝撃性の向上を図っています。

参考:YouTube「Project T (Tourbillon)」

Tourbillon Pura

Tourbillon Puraはトゥールビヨンのシンプルな機能美を追求した作品です。

航空機やライフルなどを作る際の素材として用いられるA7075ジュラルミンを削りだしてトゥールビヨンキャリッジを作ることで、耐久性を向上させると同時に腕時計の精度も担保しています。

参考:YouTube「PURA」

TSUNAMI

TSUNAMIは37mmという比較的小さなケースの中に大型の香箱と懐中時計に搭載する15mmのテンプ、そして輪列や調速装置等の部品を構築的に配置した無駄のない設計となっています。

高い精度を維持できるのが特徴的と言えるでしょう。

KURONO TOKYO

KURONO TOKYOは、手に入れるのがなかなか難しい独立時計師の作品をもっと早いスピードと手頃な価格で購入できるようにすることを目的に、浅岡肇さんが設立したブランドです。

時計やバンドに「鋼」「茜」「若竹」「岩石」など和の色を用いたり、時計ケースに蒔絵を施したりと、日本古来の美を楽しめる腕時計が特徴的だと言えるでしょう。

参考:KURONO TOKYO公式ホームぺージ

KURONO BUNKYŌ TOKYO

KURONO BUNKYŌ TOKYOは、KURONO TOKYOにおける海外向けのブランドです。

「浅岡肇のプライベートウォッチ」をコンセプトとし、1950年代~1960年代のスイス高級腕時計が有する「実用計器の美」を原点に製作され、特徴的なのは先端のカーブした針、ボンベ文字盤、30mm台のケースです。

参考:HAJIME ASAOKA公式ホームページ

菊野昌宏さんの作品

菊野昌宏さんは田中久重が作った「万年時計」を分解し調査するプロジェクトの番組を見て、時計の部品は意志と情熱があれば手作業で作ることができるのに気づき、手作業にこだわった作品を世に送り続けています。

朔望

朔は新月、望は満月を意味し、月齢表示機構のついた不定時法で時刻を表示することのできる腕時計です。

高い精度も追求されており、誤差が累積し1日分のずれが生じるのは122年後となります。

暁鐘

全面に彫金師の金川恵治氏の手作業による彫りが施され、前面・側面・裏面それぞれ異なるデザインを楽しむことができます。

裏面には、純銅と黒四分一の木目金をあしらい、暁鐘の名前が刻まれているのです。

和時計改

江戸時代の和時計にはなかった独自の自動割駒機構を開発、搭載し、文字板上のインデックスが日々、自動的に動くことで不定時法の時刻を表示することのできる腕時計です。

リューズ操作のみで自動割駒機構の早送りをすることができるのも特徴的と言えるでしょう。

参考:MASAHIRO KIKUNO公式ホームページ

和の職人技を大切にするブランド「和心」

和心は1964年創業の腕時計メーカー株式会社和工が製作・販売する、独立時計師の方々と同じく日本製にこだわった腕時計ブランドです。

株式会社和工には時計の修理に関する名称独占資格である1級時計技能修理士が1名、2級時計技能修理士が1名在籍しており、日本で受け継がれてきた職人技でメンテナンスを大切にしながら長く愛用できる腕時計を世に送り出しています。

また「畳」「宇陀印傳」「江戸組紐」「ピアノレザー」「博多織」「東京豚革」の6種類の国産のバンドが、腕時計に華やぎを添えます。

日本人の持つ高い技術と伝統文化を、その腕で感じてみませんか。

和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)

まとめ

独立時計師とは、国際的な組織であるAHCI(独立時計師アカデミー)に所属している時計職人のことですが、日本人の独立時計師は日本の伝統的な文化と技術を用いた個性あふれる腕時計を生み出し続けているとわかりました。


ぜひ独立時計師の作品に触れ、日本の時計技術の素晴らしさを感じてみてください。