火時計とは?人々の生活の中で生まれた時計を詳しく解説

火時計とは?人々の生活の中で生まれた時計を詳しく解説

人々の生活の中で欠かせないのが火ですが、人類は火を時計としても活用していたことをご存知でしょうか。

この記事では人間の暮らしの中から生まれた、火時計とその種類について詳しく解説します。

火時計とは?

火時計とは燃焼時計とも呼ばれ、何かを燃やして燃えた量や燃え残りの量を計測することで時間を計る道具です。

西洋では火時計にろうそくや油を用い、中国や日本では抹香や線香、火縄などを用いていたことがわかっています。

精度はあまり高いとは言えないものの、ろうそくやランプを用いれば持ち運ぶこともでき、夜間は明かりにもなるため、人々の生活を便利にする存在だったと言えるでしょう。

火時計の種類

火時計の種類には、どのようなものがあるのでしょうか。

5つご紹介します。

香盤時計

火時計の1つである香盤時計は香時計、時香盤、寺院などでは常香盤とも呼ばれ、6世紀ごろに中国から伝えられ1873年の改暦まで使われていました。

抹香の燃えるスピードが一定であることを利用して、燃えた長さから時刻を読み取っていたのです。

具体的には四角い盤状の香炉の中に、抹香が交わらないように工夫された専用の香型と呼ばれる定規を設置し、ジグザグ模様に埋めた抹香に端から火をつけて時間を計ります。

時刻を知りたい時は上から見て、抹香の燃えている場所を蓋の目盛りに当てはめて確認します。

また抹香が全て燃えた場合、香ならしを使用して灰を清めれば繰り返し使用することができるのです。

1626年に辻源七が幕府の指示で日本橋において鐘楼堂を建て「石町時の鐘」の管理を開始しましたが、1738年の記録には、その必要経費として「常香」があげられており、機械式時計である台時計以外にも補助的に香盤時計も用いられていた可能性があります。

香盤時計はセイコーミュージアム銀座、大名時計博物館、港区立郷土歴史館などで実物を見学できるので、興味のある人は足を運んでみてください。

線香時計

線香時計は線香が燃えた本数や長さで時間を計る火時計の一種です。

線香は線香時計専用のものが用いられ、一定の時間で香りが変わるもの、長時間使用できるよう渦巻状になったものなどさまざまな工夫が施されているのが特徴的と言えるでしょう。

ただ線香が燃えるだけではなく、線香の途中におもりをつけた糸をかけて椀状の鐘の上に設置し、糸が焼き切れるとおもりが落ちて鐘が鳴るという少し複雑な仕組みの線香時計も作られました。

そして線香時計はその風流な香りから、花街の置屋で愛用されるようになります。

店番の机に線香時計が準備され、客がつくと遊女ごとに割り当てられた穴に線香を立てて時間を管理していたのです。

具体的には1本の線香が燃え尽きるまでが客の持ち時間となり、線香がなくなると客は延長料金を支払って延長するか帰宅するかを選ばなければならないのです。

このように店番は線香の長さで遊女たちの残り時間を管理し、客の予約の受付にあたりました。

これらの時間管理方法から「線香代」という言葉が生まれチップの意味となりましたが、その相場は100疋(現在の価値で約2万円)という高額なものだったのです。

今でもこの名残が芸者の置屋には受け継がれており、線香時計は使用しないものの客には線香代を請求します。

また線香1本が燃焼する時間(30分~40分程度)に一人座敷が務まれば遊女は一人前と認められ、ここから「一本立ちする」という言葉が生まれたとされているのです。

線香時計はセイコーミュージアム銀座、東京科学博物館などで実物を見ることができます。

ろうそく時計

871年~899年まで在位したイングランド七王国のアルフレッド大王は、火時計の1つであるろうそく時計を使用していました。

このろうそく時計は約110gの蝋を用いて作った30cmほどの長さの6本のろうそくから成り立っていて、ろうそくには2.5cmごとに印がつけられており、1本のろうそくが燃えるまでは約4時間、2.5cmでは20分であることから時刻を計っていたのです。

ろうそくの火が風で消えてしまわないよう、木枠の箱に入れる工夫もされていました。

またろうそく時計はその後フランスで流行し、二度も十字軍を率い敬虔なキリスト教徒としても知られたルイ9世が十字軍の遠征で使用したことでも知られています。

ランプ時計

ランプ時計は1556年~1598年まで在位していたスペインのフェリペ2世が、夜に自室で時間を知るために設置したのが最初だと言われています。

ガラス製の油入れに時刻を示す目盛が記され、油の残量で時間を計測していました。

ランプ時計は夜間の灯火と時計を兼ねていたため、時刻を示す目盛も夕方から朝にかけてのものが多いのです。

ランプ時計の中には油圧が溜まっている油の量で変化し、燃焼速度が変わるのを防止するため、油圧を平均化するよう洋梨型の油槽とする工夫を凝らしたものも見受けられます。

また燃料となる油は煤が少なく品質が安定していることから、鯨油が主に使用されていたと言われています。

マッチが開発されていない時代には火起こしの手間がかかるため、点火装置を兼ねたランプ時計は重宝され、機械式時計が普及しても貧しい家庭などでは長くランプ時計が用いられました。

ランプ時計は、セイコー銀座ミュージアムで実物を見学することができます。

火縄時計

火縄時計は古代の中国で使用されていた火時計の一種で日本にも伝えられ、長さが50cm~60cmで燃焼速度が1時間で305mm程度なのを利用し、火縄の所々に印をつけて時刻を計測します。

見張り番の交代時間などを知らせる場合は、あらかじめ火縄の予定時刻の部分に結び目を作り、時間を確認していました。

日本では火縄は竹やヒノキの樹皮を編んで作られていたため、火縄時計においては燃焼する際の特有のにおいを気にしてなのか香木を粉末にして固めた線香を用いる場合もあったようです。

参考:織田一朗「時計の科学」

参考:港区立郷土歴史館「会津松平家由来 常香盤(香盤時計)」

日本の暮らしに合った腕時計を提案するブランド「和心」

和心は、1964年創業の腕時計メーカー、株式会社和工がお届けする和にこだわった腕時計ブランドです。

和心では火時計が日々の生活の中から生まれ、やがて時計としてだけではなく明かりとしても用いられたように、日本人の暮らしの中で受け継がれてきた素材や手法を大切にした腕時計作りを行っています。

例えば和心の腕時計に使用しているバンドは、「畳」「宇陀印傳」「江戸組紐」「ピアノレザー」「博多織」「東京豚革」の6種類で、どれも伝統的な工芸品であることから高級感はあるものの、日本人の生活の中から生まれたものばかりだと言えるでしょう。

腕時計で手作りの暖かさや、日本古来の素材の良さを感じたい人は、ぜひ和心の腕時計を試してみてはいかがでしょうか。

和心 WACOCORO (wacocoro-watch.com)

まとめ

火時計とは燃焼時計とも呼ばれ、何かを燃やして燃えた量や燃え残りの量を計測することで時間を計る道具ですが、時計としてだけではなく明かりとしても活用できることから、日本だけではなく世界各地で愛用されてきた時計だということがわかりました。

ぜひ火時計の良さを知り、これからも時計の歴史について理解を深めてみてください。